社長の最後の仕事は、上手に廃業すること
最近、廃業のご相談を受けることも増えてきました。
廃業をお考えになる理由は様々ですが、どのようなものか知っておくと、選択肢は広がると思います。
「上手な廃業」とは、社長、従業員、お客様、仕入先のみんなが嫌な思いをしない廃業だと思います。誰も損をしない廃業が理想です。
状況別の廃業パターン(任意清算等を除く)
事業継続型(M&A)
社長が廃業するときに後継者がいない場合、最初に考えるのは、事業を清算するか?継続(=売却)するか?です。
売却して利益が出る場合は売却しましょう。
どのような会社が売れるのか?大雑把にいうと、財政状態に問題がなく、他人が引き継いでも将来に渡って利益を出し続けられると思える客観的な理由がある会社です。
この場合、会社または事業の従業員、お客様、仕入先は買い手に引き継がれるため、嫌な思いをする人は比較的少ないと言えます。
事業精算型(法定清算)
会社や事業が売れそうにない場合は、清算することになります。
清算とは、会社の全財産を換金して、負債を全て返済し、残りがあれば出資者に分配する手続きです。
その手続きの過程で債務超過の疑いが出てきた場合は、倒産手続きに移行します。倒産手続きは裁判所への届出が必要になるため、弁護士に相談します。
債務超過が確定すると、銀行や仕入先等のみなさんに債権回収の一部を諦めてもらう必要があり、損をさせてしまうことになります。
今まで支えてくれた恩を仇で返すようで、忍びないですよね。手続きも面倒です。
また、会社の借入に対し、社長の個人保証を付けている場合には、社長個人の自己破産も覚悟する必要があります。
個人的には、債務超過となる前に多少の余力を残して廃業を決断して頂き、みんなに惜しまれながらビジネスに終止符を打つというのが「上手な廃業」だと思います。
負債を全部返済できるのであれば、通常清算という手続きで会社を清算することができます。弁護士の協力を仰がなくても手続きが可能なので、費用も安く抑えられるメリットもあります。
早い決断のために日頃から気を付けたいこと
「上手な廃業」の要諦は、資金的、時間的な余裕を持って、早めに廃業を決断することです。
決断をするためには、その判断材料となる情報が必要です。
有意義な情報を収集するために、日頃から次の2点に気を付けて、業務を構築して頂きたいと思います。
キャッシュフロー(資金繰り)を把握する
お金があれば、会社が潰れることはありません。よって、資金繰りの把握は会社の業務のなかでも、最も重要なものだと言えます。
会社にとって資金繰りは、人体でいう心臓の動きや呼吸のようなもので、動きが止まったときに会社は死んでしまいます。それにも関わらず、資金繰りに注意を払っていない社長も多いです。
経営データ(実績と予算等)を正確に把握すれば、状況に大きな変化がない限り、資金がいつ不足するか、ある程度正確に予測することが出来ます。
難しい知識は不要です。どんぶり勘定ではなく、Excelワークシートに落とし込んでください。
資金がショートする1年くらい前には、その事実に気付けるはずです。
適正経理を行い、正確な経営情報を把握する
多くの経営者の方にお会いすると、なかには脱税志向の経営者の方もいらっしゃいます。
脱税でよっぽど私腹を肥やしているんだろう?と思いたいですが、そういう人に限って、不思議なことにお金を持っている気配がありません。
このような経営者を見ると、個人的には、脱税は犯罪だという害悪よりも、脱税のために正しい経営データが把握出来なくなるという害悪のほうが大きいのではないかとさえ思います。
正しい経営データが把握出来ていないと、本当に業績が悪化していても、気付くのが遅くなってしまいます。
また、誤ったデータからは、業績悪化の真因を特定することができず、有効な対策を打つことも出来なくなってしまいます。
早い決断のためには、その判断材料となる有意義な情報が必要であり、有意義な情報のためには、正確な経営情報の蓄積が欠かせないのです。
<編集後記>
本の紹介というよりも、本にインスパイアされた内容になってしまいました。本にはちゃんと具体的な手続きが記載してあるので、ぜひご参考になさってください。
廃業と聞くとマイナス・イメージですが、致命傷を追わないための廃業というのもあると思います。
廃業はしないのが一番ですが、一旦廃業しても、また新たな事業で復活するような人がどんどん増えてくれば、日本経済もきっと良くなるでしょう。みんなで頑張りましょう!