なにが売れるのか?
この本は、1983年『天下取りの商法』を底本にしています。
かなり古い本なので、時代背景が異なる部分はありますが、タイトルが「超発想」となっているように、時代を超えて通用する発想を楽しむ本です。
面白かったところをいくつかご紹介します。
まずは、なにがが売れるかについてです。
時間を節約する商品
日本は一次産業も二次産業も行き詰まっている。このままでは、どんな政治家が出てきても景気回復は、はかれない。
藤田田『金持ちだけが持つ超発想』KKベストセラーズ, 2019年, p14
これ以上、モノはいらないから、一次産業や二次産業ではダメで、残されているものは三次産業しかない。つまり、サービス産業である。
「コト消費」とい言葉は2000年頃から使われるようになったようです。
今の時代、そのジャンルで一番低価格帯のもので生活をしても、機能的には十分な効用を得ることができます。
一番安いスーパーで、一番安い米を買っても十分においしいし、ユニクロの服でも十分にカッコよくて体を保護してくれる。賃貸物件でお風呂がない家を探すほうが今となっては難しい。
機能的に不十分(不快)な状態から、イーブンな状態(快でも不快でもない)に移れたときにはすごくうれしいけど、それを超えるとコスト対比でみた喜びの量って低くなりますよね。
だから、モノを売るのでも、その先にあるコトに焦点を当てて見せてあげないと売れなくなった。みんなが欲しいのはモノではなくて、無形の何かなんです。
GDPが大きくなると、国が豊かになるのではなく、時間不足時代になる。文明が進めば進むほど、生活は複雑化し、現代人は時間が不足してしまう。
藤田田『金持ちだけが持つ超発想』KKベストセラーズ, 2019年, p21
無形で欲しいものの最たるものが時間。
時間って経済でいうお金のようなもので、どんなものにも使える資産です。
欲しいものがなにもなくてもお金は欲しいって思う人が多いように、何かしたいことが無くても時間は欲しいものです。
だから、時短できる商品は必ず売れる。
もちろん、時短したいのは快の感覚の少ない活動、一般的にはビジネスだったり、家事だったりの部分です。
ビジネスや家事は時短、快を感じる活動の時間はたっぷり取る(取りたい)というふうに二極化が進みます。
心を豊かにする時間にすぐ入れるようにする時短グッツ、時短ノウハウというものの需要もますます大きくなるでしょう。
海外のビジネスを日本で成功させる秘訣
日本人のなかに舶来崇拝と尊攘論が同居している
『マクドナルド』とカタ仮名では書いているが、英語では書かない。
藤田田『金持ちだけが持つ超発想』KKベストセラーズ, 2019年, p103
というのも、日本人の精神構造は二重になっているからである。
表面的には舶来コンプレックが強く、外国人に対してはわけもなくニコニコしている。
ところが、その笑顔の下では、このアメリカ人め、と思っている部分がある。舶来崇拝と尊王攘夷が日本人の中では紙一重で重なっているのだ。
マクドナルドでは、店内にアメリカ国旗やアメリカの地図等、アメリカを想起させるものを置くことを禁止しているそうです。
さすがに現在では「このアメリカ人め」と思う人は少ないと思いますが、この二重構造は日本に限らず、どこの国にもあると思います。
たしかに、アメリカ文化を消費していても、国家としてのアメリカが前面に出てくると、知らない人の家にお邪魔したような、居心地の悪さがある。
非日常として利用してもらうなら他人の家に来てもらうスタイルでも良いと思いますが、日常的に利用してもらうなら、自分の家だと感じてもらえるよう、現地化する工夫が必要です。
自動車を売る方法
私は、信号を、赤黄青で識別させるのは、色覚異常の人を差別することであって、おかしいと思っている。
藤田田『金持ちだけが持つ超発想』KKベストセラーズ, 2019年, p169
信号を色から形にかえるだけで色覚異常の人たちは救われるのである。
現在は色覚異常があっても普通免許であれば、ほとんどの場合、免許が取れるそうです。信号も場所で覚えておけば、問題はありません。
ここでは、考え方の焦点を当てています。
この本の記述によると、当時日本に赤と緑が区別できない色覚異常の男性が全体の3%いらっしゃるという統計があった。この3%の方々は、それだけの理由で免許が取れない状況にあったそうです。
そこで藤田さんは提案します。
だったら、信号機を 赤×・黄△・青〇 の形でも表現する方法に変えるよう、自動車メーカーが一致団結して運動すればいいじゃないか!と。
そうしたら、自動車を買ってくれるお客さんが3%増えるやないか!と。
私は、こういうビジネスで問題を解決しようとする発想は好きです。あくまでも例なので、実現には様々なハードルがあると思いますが、商売でなんとかしようとする発想が好きです。
活動自体が正しくても、誰かが損をしているスキームだと長続きしないですもんね。
まずは儲かること、その制約のなかで問題解決をする。これこそ経営の醍醐味だと思います。
<編集後記>
藤田田さんの本は、いつ読んでも何かヒントが得られます。この本には、うどん屋がうどんの美味さを科学的に研究し出したらライバルとして怖い、という話も書いてあり、現在の丸亀製麺(トリドールHD)の成功を見透かしているようで、スゴいなぁと思いました。